足関節炎に対するヒアルロン酸の関節内注入

まったく専門外だけど、しばしば整形外科の先生方に施行していただく手技のため、ちょこっとだけお勉強。



■Intra-articular injection of hyaluronic acid is not superior to saline solution injection for ankle arthritis: a randomized, double-blind, placebo-controlled study.


RESULTS:
Of the sixty-four patients randomized and treated, eight patients withdrew, leaving fifty-six patients who completed the entire study. There was one mild adverse event (1.6%) among the sixty-four patients. At six weeks and twelve weeks, the mean AOFAS scores in the hyaluronic acid group had improved from baseline by 4.9 and 4.9 points, respectively, whereas the mean AOFAS scores in the placebo group initially worsened by 0.4 point at six weeks and then improved by 5.4 points at twelve weeks. While the change at twelve weeks from baseline was substantial for both groups, the between-group differences were not significant.
CONCLUSIONS:
We found that a single intra-articular injection of low-molecular-weight, non-cross-linked hyaluronic acid is not demonstrably superior to a single intra-articular injection of saline solution for the treatment of osteoarthritis of the ankle.


足関節炎に対するヒアルロン酸の関節内注射の効果は「まだ証明されていない」。

対象:すべての研究クライテリアを満たした64人足関節炎の患者
方法:無作為割付、二重盲検
介入:ヒアルロン酸の関節内注射(単回)
対照:生理食塩水の関節内注射(単回)
アウトカム:American Orthopaedic Foot & Ankle Society ( AOFAS ) clinical rating score。6週間目と12週目。
結果:両者に有意差なし

著者らの結論:「足関節炎に対してヒアルロン酸の関節内注射は生食の関節内注射よりも有効とはいえない」




私の感想。6週目において有意差はないもののAOFASスコアは、介入群では4.9ポイント改善に対し、対照群では0.4ポイントの悪化。nを増やしたら有意差が出るのかもしれない。ただ、効果があるとしてもそれほど大きな効果ではないのだろう。また、変形性膝関節症に対してはヒアルロン酸の関節内注射の効果は証明されているらしい。

HBVワクチン

不運にもHBVワクチン接種は、費用または関心の低さから拡大予防接種計画にすべて組み入れられているわけではない。その計画はリスクの低い国でさえ費用に比べて効果の良いものであるが、世界で最も裕福な国の中にはまだ採用していない国がある。

日本においてはHBVワクチンはユニバーサルワクチネーション(全員接種)ではない。北朝鮮を含め、ほとんどの国でユニバーサルワクチネーションとなっている。

AST/ALT値と肝細胞壊死の相関は弱い

無症候性肝障害について勉強中。


Pratt DS, Kaplan MM., Evaluation of abnormal liver-enzyme results in asymptomatic patients., N Engl J Med. 2000 Apr 27;342(17):1266-71.


Both enzymes are released into the blood in increasing amounts when the liver cell membrane is damaged. Necrosis of liver cells is not required for the release of the aminotransferases. In fact, there is poor correlation between the degree of liver-cell damage and the level of the aminotransferases.


"Both enzymes"とはAminotransferase、つまりASTおよびALTのこと。肝細胞障害の程度をあらわすが、肝細胞膜のダメージだけで、必ずしも肝細胞壊死を伴わなくてもAST/ALTは上昇する。

腺腫性ポリープと若年性ポリープは異なる

Gardner症候群(家族性大腸ポリポーシス+骨腫+軟部組織腫瘍)の問題で、「若年性ポリープである」という選択肢があった。ポリープは確かだし、若年性であることも確かであるので、○かと思ったが間違いであった。正解には「病理学的には腺腫性ポリープである」とあった。

「若年性ポリポーシス」はそれ単独の疾患概念である。遺伝型は常染色体優性遺伝と不明の2種類。過誤腫。癌化率は低い(過誤腫だから)。(イヤーノート)

A型胃炎とB型胃炎の覚え方

臨床であまり使ったことはないが、試験にはA型胃炎とB型胃炎が出題される。

  • A型胃炎:自己免疫性胃炎。壁細胞抗体は高率に陽性。酸分泌↓。内因子↓。悪性貧血を伴う。
  • B型胃炎:ピロリ菌感染による。日本人はB型胃炎が多い。胃の肛門側(十二指腸に続く方)から徐々に口側へ広がる。

A型胃炎はAutoimmune、B型胃炎はBacteriaと覚える。

今度は日本消化器病学会専門医資格認定試験

今度は消化器病学会専門医


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日本消化器病学会専門医資格認定試験問題・解答と解説 (第4集)


今年、ようやく受けます。問題集は第4集まで出版されている。とりあえず、一番新しい第4週を買う。けっこう難しいねえ。内科認定医の問題集は、分野ごとに問題と解答がまとめられていたけど、消化器病学会の第4週は、一ページの表に問題、裏に解答となっており便利。

重症薬疹(SJS, TEN, DIHS)についてまとめ

重症薬疹についてまとめ。思い切り混同していたが、それぞれ異なる。重症薬疹は3つ。スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens Johnson Syndrome;SJS)、中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis;TEN)、薬剤性過敏性症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome;DIHS)。DIHSは比較的新しい概念。【薬剤アレルギー 重症薬疹をめぐって】 重症薬疹研究班診断基準2005の意義と解説、藤山幹子、皮膚アレルギーフロンティア4巻2号 Page69-72(2006.07)より引用。



スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens Johnson Syndrome;SJS):発熱を伴なう口唇、眼結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部における重症の粘膜疹および皮膚の後半で、しばしば水泡、表皮剥離などの表皮の壊死性障害を認める。原因の多くは薬剤である。

中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis;TEN):広範囲な紅斑と、全身の10%以上の水泡、表皮剥離・びらんなどの顕著な壊死性障害を認め、高熱と粘膜疹を伴なう。原因の大部分は薬剤である。

薬剤性過敏性症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome;DIHS):高熱と臓器障害を伴なう薬疹で、薬剤中止後も遷延化する。多くの場合、発症後2〜3週間後にHHV-6の再活性化を生じる。


SJSとTENの違いは、皮膚病変の有無。SJSは粘膜病変が主体。最初は皮膚病変が少なくSJSだと思っていても、後に皮膚病変が拡大してTENに移行する場合もある。研究班の診断基準では、皮膚病変の割合が10%を超えていたらTEN。DIHSは診断基準があるからそれを満たせば診断できる。DIHSとSJSの合併、あるいはDIHSとTENの合併もありうる。SJSの死亡率は6.3%、TENは17.7〜27.5%*1。意外と死ぬ。

*1: SJS/TENの早期診断と治療 皮膚科医の役割、末木博彦ら、皮膚アレルギーフロンティア(1348-7280)4巻2号 Page73-77(2006.07)