肝不全・門脈シャントなしの肝性脳症

意識障害があれば血中アンモニアを測定する。高アンモニア血症であれば肝性脳症であろうと推測はできる。しかし、肝性脳症を起こすのは肝不全や門脈シャントだけでなく、代謝性疾患も引き起こしうる。


■シトリン欠損症


シトリン欠損症=成人発症II型シトルリン血症。シトリンと呼ばれる酵素活性が低下しているために肝性脳症を来す。細かい代謝経路はリンク先を参照していただくとして、ポイントはシトリン欠損症では糖負荷によって肝性脳症が悪化するという点。糖質から生成されるNADHが細胞質に蓄積されることによるらしい。

肝性脳症に対しては、ナトリウムや水分の負荷をあまりかけたくないがために高糖質輸液を選択しがちである。また、経口摂取可能なときは蛋白制限をかける、つまりは相対的に糖質の摂取が多くなるのが通常である。また脳浮腫を併発すればグリセオールを投与するが、これはシトリン欠損症(成人発症II型シトルリン血症)には禁忌である。マンニトールを使う。シトリン欠損症自体は稀な病気ではあるが、知らないと患者を殺してしまう。

シトリン欠損症の患者さんは、普段から炭水化物を避ける食事をしている。高蛋白質、高脂肪食品を、具体的には豆やマヨネーズなどを好むという。普段は炭水化物を避ける食事によって症状なく過ごしてきた人が、歯が悪くなって豆を食べられなくなって発症した例や、骨折して入院し病院食によって発症した例がある。一見、ただの偏食に見えるが実は合理的な理由がある場合もあることに、医療者は留意しなければならない。