肝臓に関する諸数字

大まかなところは把握できているけれども、細部や根拠があやふやな数字がある。日本消化器病学会雑誌の総説から抜き出した。


日消誌 2015:112:24-31 青木優 高山忠利 肝癌の外科治療の最前線

  • 日本の肝細胞癌に対する肝切除後の手術死亡率は1970年代では15.7%だったが2000年代では0.6%に著明に改善した。
  • 乏血性の早期肝癌は治療対象とはならず、二次発癌(多中心性発生)を念頭において厳重に経過観察すべき。
  • 腫瘍径3 cm以下のHCCについて、肝切除またはRFAで3編のRCTがあるが、いずれも少数例の検討のため明確な結論は出ず。
  • HCCは根治的な切除を行っても5年で80%の症例で再発を認める。初回再発の90%以上が肝内再発である。


日消誌 2015:112:37-61

  • 世界では、肝癌は肺癌、胃癌に続いて3番目多く、年間70万人が亡くなる。
  • 日本では年間3万人強が肝癌で亡くなる。
  • 死亡数と発生数の比は0.93で、発生するとほとんどの方が肝癌で亡くなるという、予後の悪い癌腫の一つである。
  • 日本での肝癌発生の成因は変化した。2012年の日本肝癌研究会のアンケートによれば、15000症例中、C型肝炎は55%、非B非Cは20%、B型肝炎は15%くらい。(ブログ主注:以前はもっと非B非Cの割合が少なかった。ウイルス性肝炎の治療法の進歩や感染予防によってC型およびB型肝炎による肝癌の割合が減った)。
  • 非B非C中、基礎疾患が明らかにNASHなのは数%、「その他」が4割強。(ブログ主注:おそらく肝生検で診断確定されたものを「明らかにNASH」としている。臨床経過からNASHであろう、というものを含めるともっと多い)。
  • 手稲渓仁会病院消化器病センターのデータでは、肝癌症例のHBV既感染率は30%台。検診施設での同世代70歳〜80歳の健常者のHBV既感染率は39%。現時点では、HBV既感染がどれくらい発癌に関与しているかは不明。
  • 日本の成績ではウイルス性肝炎が原因の肝癌と比較して非B非C肝癌のほうが、肝切除の成績が良い。非B非C肝癌のほうが多中心性発癌が少ないからではないか。