劇症肝炎に対するステロイド投与のエビデンス

日本では劇症肝炎に対して、血漿交換に併用して点滴静注にてステロイドを使用する。とにかく炎症を抑制し、これ以上肝細胞壊死が起こらないことを意図している。しかし、劇症肝炎にするステロイドには十分なエビデンスがないようだ。海外と比較して定義の違いがあるが、概ね日本でいう劇症肝炎は海外ではAcute liver failureに相当する。“シャーロック”肝臓病学の急性肝不全(Acute liver failure)の章にはどう書いてあるか。

…コルチコステロイドは無効である。…


…コルチコステロイドの大量投与は急性肝不全に対して有効ではなく、むしろ感染やびらんなどの合併症をきたす可能性がある。


前者の「コルチコステロイドは無効である」は文脈から考えると、脳浮腫には無効と読める。後者は文字通り「急性肝不全に対して有効ではない」と読める。明らかに推奨されていない。「“シャーロック”肝臓病学」には参考文献が提示されていないがおそらくこの辺。


■Randomised trial of steroid therapy in acute liver failure. Report from the European Association for the Study of the Liver (EASL).[Gut. 1979] - PubMed - NCBI


ちゃんとRCT(非盲検)がなされている。1979年と古いけど。対象は40人のacute liver failure。26人がステロイド群で14人が対照群。アウトカムは生存で、ステロイド群12%、対照群14%で有意差なし。生存曲線はこんな感じ。



古いし非盲検だしnも少ないけど、たぶん、劇症肝炎に対するステロイド治療のエビデンスでこれが最良のもの(他にRCTがないか探したが見つけられなかった)。日本で劇症肝炎に対してステロイド治療を続けるのなら、きちんとRCTをおこなったほうがいいと思う。