病歴要約の書き方

日本内科学会雑誌に「病歴要約作成の手引き」があるので、必ず全部目を通すこと。斜め読みではいけない。手引きに従った書類を作成する能力は、医学的な能力と同じく、医師にとって重要である。たとえば、「薬剤名は原則として一般名で記載する」とある。これを怠っただけで医学的には問題のない病歴要約が減点になる。また、内科学会のホームページには病歴要約の見本があるので、すみやかにダウンロードすることをお勧めする。「後でまとめて書く」と思っている人もいるかもしれないが、1例でもよいから、一度この形式で病歴要約を完成させてみるべきである。

日常の業務でこの形式で要約を作成してもよいが、必須ではない。私は、業務で作成する病歴要約と、提出用の病歴要約は、目的が異なるゆえに書き方も異なると考える。業務で作成する要約は、今後の外来followや転院先で役立つように書く。薬剤名は(ゾロ品ならともかく)商品名で書いたほうが便利だ。文献引用もなくてもよい。入院時の経過も、外来followで不要な情報であれば大雑把でよい。

一方、提出用の病歴要約は、医学的に正しく病歴要約が書けることをアピールするのが目的である。嘘を書いてはいけないが、目的に不要な情報は書かなくてもいいし、むしろ書かないほうがよい。たとえば、私はある呼吸器疾患の症例について、入院中にたまたま便潜血が陽性であったため、大腸ファイバーを施行し、ポリペクトミーは不要であるがフォローが必要である大腸ポリープを認められたことを、提出用の病歴要約から削った。業務用の要約では削ってはならない情報である。しかし、提出用では字数制限にかかりそうなら削る。メインの呼吸器疾患について詳しく記述するほうが重要である。

評価が減点方式であることも、気に留めておいたほうがいい。要するに、余計なことは書かない。私の場合、4分の1程度の余白を残した病歴要約もあったが特に減点はされなかった(ただ、手引きに「なるべく余白を残さぬよう」とはある)。一方、考察の一部について、症例と関係が薄いとして減点された。具体的には、早期胃癌の部分胃切除術手術症例について、「○○という理由で本症例はEMRではなく開腹手術となった。現在であれば、腹腔鏡下胃切除術も検討したであろう」と書いたら、「腹腔鏡下胃切除術などに言及するのであれば、部分胃切除術についての考察をもっとせよ」というようなコメントがついた。

他人の症例を写して提出するのは論外である。バレる可能性は高くはないだろうが、バレたときの被害はきわめて大きい。リスクを評価できないのは、医師としての資質を疑う。