認定医試験に出る問題の多くは臨床で役に立たない

臨床の現場では、SLEの診断基準は覚えなくてもよい。本に書いてあるからだ。Wegener肉芽腫症で陽性になるのが、PR3-ANCAだったか、MPO-ANCAだったかも、本に書いてある。血液が専門でなければ、骨髄像を読めなくてもよい。腎臓が専門でなければ、腎生検所見を読めなくてもいい。しかし、試験にはよく出る。

頻出問題でなければ、さらに臨床で役に立たない問題の比率は増える。遺伝性のパーキンソン病の責任遺伝子がどの染色体に載っているかなど、神経専門医であっても覚える必要ないのではないか。問題作成者の見識を疑うが、文句を言うよりかは試験に通ることのほうが重要である。効率的に試験に通るには、暗記するものの優先順位をつけるべきである。


1. 緊急時に必要なこと。
2. 知っていないとヤバイこと。
3. 自分の専門分野。
4. 頻出問題で知らないと解けないこと。


ハリーコールが鳴ってから、呼吸と胸骨圧迫の比が1:15だったか1:30だったかを調べる時間はない。VFの波形も同じ。この辺はACLSで学ぶ。また、そもそも疾患を知らなければ鑑別診断としてあがらないわけで、肺塞栓や大動脈解離を知らない内科医はいないだろうが、これらの症状を問う問題は意外と難しい。禁忌肢もうっかりすると踏んでしまうので(本当だよ)、最優先で暗記。この辺りまでは認定医試験があろうとなかろうとも知っておくべきこと。

自分の専門分野を暗記する必要があるのは、口頭でコンサルトがあったときに答えられないと恥ずかしいから。本棚のあそこにあるあの本の何ページに書いてある、とまで分かっているのに答えらなかったりする。自分の専門領域であれば認定内科医レベルの問題は完璧にしておきたい。頻出問題を暗記するのは当然であるが、どれが頻出なのかを判断するのは難しい。過去問をこなすしかない。過去問を解く労力の半分以上が頻出問題のスクリーニングにある。4.については、試験が終われば忘れても良いものなので、ノートにまとめて試験の1週前ぐらいから集中して覚えるのがお勧め。

頻出問題でないものは、覚える必要なし。私はけっこうビビリだったので、過去問は3回解いたが、あまり意味がなかった。少なくとも2007年の試験では、「頻出問題」か「初見」の問題がほとんどで、「過去に1度だけ出た問題」はあまりなかったように思う。少なくとも、「過去に1度だけ出た問題」を覚えるのはパフォーマンスが悪すぎる。

会場での注意

私は2007年の東京会場で受けた。7月にしては珍しく直撃しそうな台風が来ていたため、飛行機をキャンセルして早めに新幹線で現地入りした。ホテルは会場のすぐ近くのルートイン五反田。試験はたいていそうだが、前日は十分な睡眠をとるべし。一夜漬けでやったところが出る確率より、睡眠不足からくるミスで失点する確率のほうが高い。私は念のため睡眠剤を準備した。

朝は早めに起きた。ルートイン五反田ホテルは、宿泊者は500円で朝食バイキングが食べられる。また、周辺にはコンビニがたくさんある。会場にはイヤーノートはかさばるので持ち込まず、自作の「暗記すべきものリスト」だけにした。私は試験直前にイヤーノートは意味がないと思う。試験は合計で300問で、途中に休憩時間をはさみつつ、3回に分けて行う。私は十分に時間があったが、2ちゃんねるの書き込みなどではギリギリという人もいたようだ。時計は必須。携帯電話は不可なので注意。

筆記用具は鉛筆だけと書いてあったが、シャーペンでも問題ないようであった。ただし、マークシートの塗りつぶしは鉛筆のほうが便利。個人の好みで良いと思う。私はシャーペン2本、鉛筆5本、消しゴム2個を準備していった。消しゴムはケチらずにちゃんとしたものを用意すること。鉛筆のお尻についているようなのではダメ。以外に役に立ったのがボールペン。試験問題はツルツルした固い紙なので、鉛筆やシャーペンでは書き込みにくい。病歴のキーワードに○をつけたり、明らかに間違っている選択肢を消したりするときに、ボールペンがあったら便利であった。

昼休みは私のときは60分であった。「日曜であり近くの食堂は休みが多いので昼飯は各自準備してくるように」という注意が前もって内科学会からなされていたが、実は5分も歩けばガストやら吉野家やらがある。また、同じビル内にローソンが入っている。他のコンビニも結構ある。私は気分転換も兼ねてガストで食べた。ただ混雑の状況が分からないので準備するほうが無難ではあるだろう。休み時間ではトイレには列ができる。ダッシュで早く並ぶか、他の階に行くか、むしろ時間差で列が解消したころに行くかすると良い。休み時間中の答え合わせは私はしなかったが、前半に出たのと似たような問題が後半にも数問出ていたので、余裕があるなら復習のつもりでの答え合わせも良いかもしれない。会場内は禁煙だが、入り口外では結構吸っている人がいた。煙たくてしょうがないが、それぐらいは仕方がないだろう。

試験は一時間後より退席可能。ただし、試験終了10分前になると、退席できない。当然、退席後は再入室不可。トイレは可。退席もトイレも挙手して試験官の許可を得てから。私は退席もトイレもしなかった。ケアレスミスは必ずあると思い最後までチェックした。複数選択問題(a, b, c, d, eから2つ選べ)や、「間違っているものを選べ」問題は、まとめてある。「a.1,3,4のみ; b.1,2のみ; c.2,3のみ; d.4のみ; e.1〜4のすべて」という形式の問題は一問もなかった。

腹水の鑑別(特に肝疾患に関連して)

  • 腹水は従来、漏出性と滲出性に分類されていたが、この分類には限界がある。
  • 血清-腹水アルブミン格差(SAAG: serum-ascites albumin gradient)による分類が優れている。
  • SSAG(血清アルブミン値-腹水アルブミン値)が1.1 g/dl以下なら、腹水は門脈圧亢進によるものではない。
  • SSAGが1.1 g/dl以上なら、腹水は門脈圧亢進によるものである。
  • 多核白血球数が250/mm2の場合は特発性細菌性腹膜炎を疑い、経験的に抗生物質投与を開始すべき。
  • ベッドサイドで直接腹水を血液培養ボトルに入れることにより、培養が陽性になる確率が劇的に高くなる。
  • 腹水蛋白濃度が高い時には肝静脈閉塞症(Budd-Chiari症候群)を考えなければならない。

現在の勤務先では、腹水検査のルーチンにアルブミンは入っていない。細胞数も入っていない。

原発性硬化性胆管炎(PSC:primary sclerosing cholangitis)

  • PSCの75%に潰瘍性大腸炎の合併がある。
  • 潰瘍性大腸炎の5%にPSCの合併がある。
  • 潰瘍性大腸炎の重症度は、PSCの発症や進行と無関係である。
  • 好中球細胞質抗体(ANCA)はPSCの70%に陽性である。しかし、特異性はない。
  • PSCの10%に胆管癌の合併がある。

謎の黄疸のときに必ず鑑別として挙がるものの、PSCはめったにみない。潰瘍性大腸炎との合併については、脆弱な大腸上皮のため細菌性毒素が門脈に入ることが病因の一つと考えられるらしい。

吃逆(しゃっくり)の治療法

口伝


「柿のヘタを煎じて飲む」というのはよく聞くけど、実際使おうと思ったらどうすればいいのだろう?砂糖に関しては、私が大学院生だったころのボスが「NEJMに載っていた」といって、しゃっくりしていた助教授に勧めていた。


  • 吐き気としゃっくりがあれば、頭痛・髄膜刺激症状がなくても髄膜炎を疑う。

てなことを、神経内科の先生が言っていた。

多発性嚢胞腎

  • 50〜70%に肝嚢胞を合併。
  • 60歳までに50%が末期腎不全に至る。
  • 頭蓋内動脈瘤は無症候性患者の5〜10%にみられる。くも膜下出血の家族歴があればMRAを行う。

多発性肝嚢胞に関連して。これまで、くも膜下出血の家族歴など聞いていなかった。

多発性肝嚢胞

  • 常染色体優性遺伝。
  • 半数が多発性嚢胞腎を合併する。
  • 採血上は肝機能異常はない。
  • 腹水、閉塞性黄疸、肝静脈閉塞は稀。
  • 生命予後はよい。予後は嚢胞腎の程度による。
  • 症状は慢性の圧排症状。もしくは急性の破裂か嚢胞内部への出血。

成人多嚢胞性疾患(adalt polycystis disease)の一側面。嚢胞が増大したり、エコー上でcyst様ではなくややhyperechoicに見えたりすることもあり、固形腫瘍との鑑別に迷うことがある。まあ、でかいcystを持っている人もいるのだから、経時的に増大傾向があったって別に不思議ではないのだろう。